あぁ死して屍拾う者なし
昔のテレビ時代劇「大江戸捜査網」の話ではない。
見るも無残な、土に還るのをじっと待つだけの遺産。
人々の移動手段として奮闘してきたものの、屍としてなおこの世を漂いつづけるモノの姿である。
私にシャッターを押させた屍たちのありのままの姿なのである。
崩れた屋根の重さに耐える屍
あぁ日産スカイライン
倒れてきた鉄ゴミに正面から挑む屍
あぁダイハツフェロー
めくれたボンネットが痛々しい屍
あぁトヨタクラウン
あぜ道にて植物と同化しつつある屍
あぁホンダN360
もともとがガイコツみたいな顔の屍
あぁスバルサンバー
後ろ姿に至っては、悲惨そのものである。
力尽きて地面にて目をカッと開いたまま息絶えた屍
あぁマツダコスモL
屍と化しても、後部ピラー付近にはラグジュアリーサルーンとして生きた証が涙を誘うのである。
廃屋に頭を突っ込んだまま息絶えた屍
あぁ三菱ランサー
GSRの文字がこんなに控え目だった時代に生きたランサー。
「エボリューション」とかなんとか威張ってる最近のランサーに見せてあげたい先祖の奥ゆかしさなのである。
死して屍拾う者なし。
その自らの姿をさらし、言い残したかった言葉をもじっとこらえたこのモノたちに
私はひとり、手を合わせる。